コミュニティー・ビジネス
コミュニティービジネス
「個」を重視する生活の裏返しとしての「コミュニティー」
コミュニティービジネスとは、共通する地域や趣味、関心事などを共有する「場」や「機会」を提供するサービスである。それは、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス、コミュニティー型の会員制サービス)やマーケットプレイスといったICT系のものだけではなく、リアル社会における一般的な集まりも含まれる。
コミュニティーの切り口は、生涯学習ヤクラブ活動、地域交流など、多岐にわたる。これから団塊の世代が一斉にリタイアし、時間とお金に比較的余裕を持つ高齢者(アクティブシニア)が急増する。また、時を同じくしてブロードバンドが普及することで、オンラインコミュニケーションはますます身近なものになっていく。その結果、「何か」に強い関心を持つ人々の「場」や「集団」(=コミュニティー)が数多く形成され、そこに関連した様々なビジネスが活況を呈する。共通項を待った集団であるため、それを切り口に広告宣伝や販促、マーケティングを効果的に行いやすい。
古くから、ミニコミ誌ヤタウン誌などの印刷媒体、地域FMラジオ局、無線愛好家による特定のグループ、パソコン通信や草の根BBSなどのオンラインネットワークなど、趣味・嗜好などを共有するコミュニティーは様々なものが存在していた。商店街や町内会もコミュニティーの一種である。これらは地域や地縁を軸とした共同体であったがブロードバンドの普及によって「地域」を超えた情報交換の場として機能するようになる。社会全体への貢献(CSC)という意識が強くなるにつれて、地元への帰属意識も高まる。それに伴って、様々な形でコミュニティ形成を支援するビジネスも活発になるだろう。
ブロードバンドの定着によって、オンライン上のコミュニケーションにも変化があるだろう。個人が主体となるプログからSNSへと、「つながり」を重視した「場」に多くの人が集まるようになる。「ゆるいコミュニケーション」が魅力とされているTwitter(ツイッター)も同様だ。24時間いつでも自分自身がたくさんの人々とつながっていることが確認できる。実生活では「個」を守りつつ、オンラインゲームなどの仮想空間では「仲間とつながっていたい」という要求を満たすというライフスタイルを送る人が増えるだろう。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が展開しているPlayStationHomeでは、仮想化した自分自身のキャラクターを使って、仲間としゃべったり、遊んだり、ゲームをしたりすることができる。このような仮想空間はサービス提供側にとっては顧客の囲い込みになるため、積極的に取り組む価値がある。今後も様々なサービスが出てくるだろう。
価値観の多様化が進んだ現代社会では、「自分らしさ」を守りたいという欲求から「個」を重視したライフスタイルが強くなっている。だが、人間の持つ社会性ゆえに「本当に一人で生きていける」という人は少ない。
一人は気楽である半面、孤独感や漠然とした不安に襲われることもある。核家族化/少子化が進み、大家族が支え合って生きていくような生活スタイルは極めて少なくなった。これからは、互いに助け合える安心感を求め、他人同士がコミュニティーを作りながら協力して共に暮らすという「新しいライフスタイル」が登場し、一つのタイプとして定着すると予測する。 日本では、昔からの生活の知恵として「長屋住まい」があり、コミュニティーの中でふれあいのある暮らしを営んでいた。21世紀型の社会では、「現代の長屋」とでもいうペきルームシェアやドミトリーハウスの活用が盛んになっていく。特に高齢者になると、健康面での心配も大きくなり、心細くなっていく。既に高齢者向けのコミュニティー住宅は登場しているが、今後さらに増加すると考えられる。