コンテンツとサービス
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社会環境や生活様式が大きく変わり、放映時間という、放送局の都合に合わせてテレビ番組を視るというスタイルは合わなくなっている。
皮肉なことに、デジタル放送への移行によってテレビ放送の凋落は決定的なものになる。テレビ番組はネット経由で、あるいは録画して見るというスタイルが主流になるだろう。それによって、据置型のテレビでリアルタイムに視聴した人だけを対象にしてはじき出された「視聴率」はいよいよ意味を失う。
視聴率を基にスポンサーを募って広告料で稼ぐというビジネスモデルを、放送局は根本から見直さなければならなくなる。テレビは「視るもの」から「使うもの」へと変わっていく。インターネットとテレビ番組との連動、ネット配信を含むコンテンツの多角的展開は必須である。放送局のコンテンツが大量に流れ込むことは、結果的にブロードバンドの普及を加速することになるであろう。
ブロードバンドの普及によって、音声や動画などのコンテンツは増えていく。これに伴って、テキストベースのデータ検索を基本とする現在の検索エンジンでは十分な対応ができなくなる。「メタ検索」をキーワードに新たな競争が起こるだろう。
ブロードバンドという誰でも利用可能なデジタルコンテンツの流通手段を得たことで、自由に作品を発表できる環境が整いつつある。音楽や小説、コミック、アニメなど、これまで音楽レーベルや出版社の壁に阻まれて世に出られなかった才能があちこちで開花し、アマチュアとプロフェッショナルが混沌とする時代になる。商業的ではないため十分な時間がかけられ、作りたいと思うものを純粋に作れる分、アマチュア作品で大ヒットを飛ばすようなものが出てくる可能性もある。さらに、そのタレント(才能)を中心にインターネットを介してコミュニティーが形成され、社会的にもビジネス的にも大きな影響力を持つカリスマが様々な分野で登場するだろう。
スケーラブルで超大型にも対応する様々なタイプのディスプレイが登場することで、「デジタルサイネージ」の市場が急成長する。これは、従来紙ベースだった屋外広告をデジタルに置き換えるだけでなく、動きや音を加えて、より効果的なものにしたり、時間帯によって表示を変えたりすることでスペースを有効活用することができるようになる。紙による広告との最大の違いは、デジタルサイネージは単なる広告ではなく販売チャネルとしても機能することである。デジタル化した新聞や雑誌、音楽、コンサートチケットなどを直接販売することができるようになる。通常はユーザーがWebサイトなどにアクセスしなければ目に触れることはないが、屋外広告はITに縁が薄い人の目にも触れる、数少ない「プッシュ」型のプロモーション手段なのである。
世界各地にブロードバンドが普及することで情報交流が進む中で、翻訳サービスに対するニーズが高まるだろう。今でも大手ポータルサイトなどがWebサイトの翻訳サービスを提供しているが、翻訳精度の一層高いものが求められるようになる。これは日本と外国語、外国語から日本語のどちらのニーズもある。現在はテキストベースが主体であるが、音声ベースヘの移行は不可欠であり、2025年時点では実用レベルに近いところまで精度が向上すると予測される。音声認識と音声合成は様々な分野で重要さを増すだろう。
ブロードバンドの普及で企業のWebサイトも、動画をペースにしたもの、インタラクティブなものへと変化していく。タレントなども頻繁に登場するようになり、それがタレントにとってテレビ番組やCM出演に代わる主な仕事になっていく。主な企業はブロードバンド上に仮想空間(マーケットプレイス)を作り、そこにできるだけ多くの人を呼び込むことに注力するようになるだろう