ディスプレイと入力デバイス
ディスプレイと入力デバイス
液晶ディスプレイの大画面化とコストダワン競争は、ここに来て限界が見えてきた。それは、現状水準からの発展が行き詰まったということでもあり、各社は「3D」など新たな方向を模索しているが、将来像はいまだ見えていない。
液晶ディスプレイの現在の表示品位と価格は長い時間と莫大な投資によって実現したものであり、他の方式で同じ水準に並ぶのは容易ではないであろう。
2025年時点での表示方式としても、液晶ディスプレイが主役であり続けていることが予想されるが、この主役の座を脅かす存在としては自発光方式の有機ELディスプレイである。
現時点ではまだこの有機ELディスプレイは寿命の問題や対湿の問題などがあるものの、そうした問題が今後の技術革新によって解決されることにより、液晶ディスプレイと肩を並べる存在になることも十分に予想される。
今後各社はHDD録画やインターネット対応など、周辺機能を拡充することで商品力を高めるというアプローチを取ることになるだろう。
「サステイナビリテイ」という社会のこ-ズを受けて、ディスプレイ発展の方向性は今後「フイルム」「スケーラブル」「省エネ」「シンプル」と4つに分かれていく。
「フイルム」は、壁掛けにできたり、貼れたりするほど薄くて軽量なディスプレイである。 こうしたものが求められるケースでは、現状の液晶デイスプレイでは構造的に限界がある。例えば液晶パネルでは厚さ0.2mm程度という極薄のガラス基板を使うため、サイズが大きくなるほどたわみを抑えるために強固なフレームが必要になる。 加えて、大きなディスプレイと重いフレームが倒れないようにするためには、それに耐えられる土台が必要になる。それにより、パネルが大型化するほど質量は飛躍的に大きくなってしまうことは避けられない。バックライトを必要としない有機ELは、フイルム並みの薄さと軽さが求められるニッチ分野で市場の一角を占めている可能性がある。
「スケーラブル」とは、画面寸法の設定が自由であることだ。
液晶パネルや有機ELは、基本的にテレビやパソコン用のディスプレイ用として規格サイズで作られているため、例えば屋外スペースで1mx10mといった変形サイズの大型ディスプレイを求められたときに対処しきれない。
この点、LEDディスプレイは任意のサイズに対応することが可能である。
PTA(プラズマ・チューブ・アレイ)方式も同様に、複数の軽いパネルをつなげることでスケーラブルな対応が可能である。
これまではディスプレイ=規格サイズが常識であったが、今後はさらに別な方式が出てくる可能性もある。
「省エネ」という点では、特にモバイル市場における意味が大きい。フルブラウザーへの対応や動画コンテンツの充実などによって、消費電力は増加の一途をたどっている。より大型サイズのディスプレイをいかに省電力に抑えるかが、技術的に極めて重要なテーマとなってくるだろう。
「シンプル」というのは、サステイナビリティのために再資源化を意識したものである。それと同時に、シンプルであるほど省資源・省エネルギーであり、コスト競争力が高まるということでもある。その観点から注目すべきは「電子ペーパー」である。このディスプレイの特徴はシンプルさと、そこに起因するコストの安さであり、性能面で他のディスプレイと比較することにはあまり意味がない。量産化が進めば、既存のディスプレイでは対処できなかった新たな市場を開拓していくだろう。
フラットパネルディスプレイ(FPD)をめぐる競争は、一時期のし烈な値下げ競争から、やや落ち着きを取り戻しつつある。
液晶テレビでは42型でも10万円を切るものが珍しくなくなり、低価格化はほぼ限界に近づいているとも見られる。 大型化競争についても、シャープが液晶テレビで108型、パナソニックがプラズマテレビで150型の商品を発表して以降、沈静化している。
加えて、パナソニックの103型のプラズマテレビの店頭価格は500万円を超える。台座を含めた質量は約320kg、使用するためには200Vの電源工事が必要になるなど、購入するにはハードルが高い。
購入を決めてもサイズが大き過ぎて、ドアや窓から搬入ができないケースも少なくないとのことである。
プラズマディスプレイと液晶ディスプレイの間の大型化競争は、ピリオドが打たれたと言っていいだろう。
2010年は「3D元年」と呼ばれ、各社から3Dテレビが発売されたが、現実的にはディスプレイの次のトレンドが3Dに向かう可能性は少ないと考えれる。
「テレビ」は放送を受信することがメインであるが、放送局としては新たに投資して3D化に対応しても広告収入が増えるわけではない。 放送局の収益が近年急激に悪化しているのは周知のとおりであり、現実的に3D化のために投資を行う余力は残っていない。
そもそも3Dを視聴するために家族全貞が室内でメガネをかけっ放しにするという状況など、現実的にはまず考えられない。別な見方をすれば、各社が揃って3Dをやらなければならないほどディスプレイの開発は行き詰まっているということになっているのかもしれない。
今後のディスプレイは、従来とは違う方向へ進化を遂げていくと予測する。
まず、社会全体が「サステイナビリテイ」を重視するようになることで、省資源・省電力が求められるようになり、その結果、ディスプレイは「フイルム」のように薄く、軽くなり、輸送コストが下がる方向へ進む。
そこで、壁掛けや天井に張るなど新たな用途が生まれる可能性がある。
シンプルでリサイクルがしやすいことも重要であり、シンプルな方が、結果的には製造コストが下がり、再資源化も容易になる。
既存技術であるプラズマや液晶も極薄のディスプレイパネルが出てきている。
フイルム並みに薄いディスプレイの実現は、有機ELパネル以外にもチャンスはある。 フイルムのように薄くて軽いディスプレイが出てくれば、天井や奥行きのない場所など、新たな用途が開けてくる。
ディスプレイを内装の一部と捉えることで、室内空間のデザインが一変する可能性もある。
フイルム並みに薄くするには、チューナー部分を分けて無線でデータ送信するなど、商品全体としての工夫が必要になってくる。
超薄型ディスプレイの一つとし々注目されるのが、「PTA」と呼ばれる新方式である。
「プラズマチューブ」と呼ばれる細いガラス管を並べたパネル(1mx1m)をつなぎ合わせることで、任意のサイズの大型ディスプレイを構成することができる。1mx1mのモジュールをつなげば、300型を超える超大型サイズや1mx5mなどの変形サイズにも対応できる。ディスプレイ本体の厚さは、わずか1mmを実現している。
超大型サイズのディスプレイが登場することで最も期待されるのは「デジタルサイネージ」(電子広告)であろう。
人間や自動車を実物大で表現することができるようになり、しかも音と動きがあるので広告としてのインパクトは格段に大きくなる。
例えば自動車販売ならば、ブロードバンドと大型ディスプレイを使って遠隔地にある車でもリアルに見せることができる。
360度をディスプレイで囲めば「仮想現実」のようなプレゼンテーションも可能になる。ショールームの設計なども大きく変わって/るだろう。
サイズについては大型化というよりも「スケーラビリティー」、つまり様々なサイズに柔軟に対応できるというのが今後の大きなテーマになっていく。 その延長線として、超大型サイズにも対応できるようになるという流れになるだろう。
現在のディスプレイは決められたサイズの中から選ぶのが当たり前と思われているが、これはあくまでも製造側の都合でしかない。
特に、デジタルサイネージが増えてくると、設置場所に合わせてできるだけ柔軟なサイズに対応してほしいというニーズが強くなる。
将来有力と思われるのは、PTAのほか、高精細化が進んだLEDディスプレイ、フレームレスのプラズマや液晶ディスプレイを複数組み合わせたものなどがある。