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ブロードバンド

もくじ

ブロードバンド」のインフラ化

プラットフォーム・ビジネス

ブロードバンドは単なる技術革新ではない。その普及と共に、ビジネスの考え方が変わるのである。
これまではハードはハード、通信は通信など、個々のビジネスとして考えられてきた。
だが、ブロードバンドが「前提」になることで、ハードを売れば通信とネットが必然的に絡んでくる。ハード-ネット-ソフト(コンテンツやサービス)までを一体と捉える「プラットフォーム」形態が今後ますます色濃くなってゆく。
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プラットフォーム・ビジネスの典型的な例は、携帯電話である。
ハードウエアである携帯電話機の販売と、ネットワークである通話料やパケット料、さらにNTTドコモの「iモード」やソニー・ミュージックエンタテインメントの「着うた」といったコンテンツやサービスを提供する一連の仕組みが携帯電話のビジネスとなっている。
 プラットフォーム・ビジネスで一番重要なのは「顧客の数を拡大すること=ハードウエアを普及させること」である。
ハードウエアの収益は販売した時点での一度きりであるが、通信料やソフトウエアの収益は継続的に入ってくる。累積すれば後者の方が金額は遥かに大きく、特に利益で比べるとなおさらである。
だが「出口」であるハードウエアをまず増やさなければ、ビジネスの可能性さえない。
結果的に、ハードウエアはそれ自体の販売で利益を出すより、顧客を獲得することが最優先になっていく。
物販としてのハードウエアと、プラットフォーム・ビジネスの中のハードウエアは「似で非なるもの」である。物販は、とにかくコストを下げて数で稼ぐビジネスだ。
頑丈に作り過ぎると次のモノに買い替えなくなるので、自分の首を絞めることにもなる。「オーバースペック」(過剰品質)になるよりは、その分品質を下げて値段を安くした方が、今まではユーザーに喜ばれた。2~3年でポロボロになってしまう携帯電話機、3~5年で古びてくる自動車など、これら全ては「コモディティー」(汎用品)としての思想で作られている。

プラットフォーム・ビジネスでは、ハードウエアで顧客を獲得することが第一目的である
そのためには、まず魅力的なハードウエアをつくることが大切である。
ハードウエアで稼ぐことが目的ではないので、むしろ買い替えはしてほしくないのである。だから、ハードウエアは長期使用を前提にクオリティーを高め、新しいものが出てもデザインを大きくは変えないのが一般的になっている。
米アップル社の携帯型音楽プレーヤー「iPhone」は現在第4世代まで続いているが、基本的なデザインは踏襲している。
任天堂の携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」でも同じようなことがいえる。

利益を出すためにコストと品質をギリギリまで削ったモノと、ユーザー獲得を第一に考え、獲得時点では利益を出すことを目的としないモノが、同じ市場でぶつかったらどうなるだろうか。
それは、携帯型音楽プレーヤーでは後発だったアップル社がソニーやパナソニックを圧倒した結果が物語っている。
ユーザー獲得を第一とするビジネスモデルは、ゲーム業界では既に一般的である。携帯電話もハードは採算ギリギリかそれ以下で販売しているし、最近は携帯キャリアが低価格な小型ノートパソコン、いわゆる「ネットブック」を無料で配り始めるなど、パソコン業界へも波及している。
今後はテレビや自動車などでも、ブロードバンドのインフラ化に伴って顧客と紐付けがされるようになってくると、こうしたユーザー獲得を第一としたビジネスモデルが広がってくることが予想される。

プラットフォーム・ビジネスで認識しなければならないことは、「全体最適」が不可欠ということである。
ハード-ネット-ソフト、それぞれの「部分」では利益を出すことができなくなるかもしれない。プラットフォーム・ビジネスで一番厳しい立場に置かれるのがハードである。だが、ここで無理に利益を出そうと値段を高くしたり品質を落としたりすると、ハードが普及しない。そうなるとネットやソフトも利用されず、共倒れになってしまう。

プラットフォーム・ビジネスは、ハード、ネット、ソフトを組み合わせて「マーケットプレイス(市場)」を作っていくものなのである。
性質が異なるビジネスを一つの事業体としてまとめ上げるためには、「全体戦略」「リーダーシップ」が不可欠である。
アップルやソニー、任天堂のように、「プラットフォームホルダー」として大きなリスクを負って「胴元」になる企業と、手数料を払ってその上でビジネスをする「店子」に二極分化が進んでいくと推測される。

デジタル・コンバージェンスとシンクライアント化

「コンバージェンス」とは、「集中・収束・集斂」という意味である。これまで違う分野とされてきたものが、「ブロードバンド」と「デジタル」を共通項として違いが失われ、業界が「融合」「一体化」していくことを指している。

ブロードバンドにつながるようになると、テレビやカーナビ、パソコン、携帯電話の差異がなくなってくる。
例えば「携帯電話」の定義とは何だろうか。
今や携帯電話は通話だけでなく、音楽プレーヤーであったり、ゲーム機であったり、あるいはカーナビのような機能があったりと様々なことができる。
また、最近のパソコンにはテレビチューナーを搭載したものが多い。
カーナビではテレビ番組を見ることもできるし、最近のテレビはインターネットに接続できる方が普通になってきている。
メーカー側ではそれぞれ「ウチはパソコンを作っている」「カーナビを作っている」といった業界の違いを意識しているが、ユーザーから見れば違いが薄れてきているのである。
 最近はネット機能を含む「HDMIl.4」に対応したテレビが登場してきている。2012年には「マルチメディア放送」も予定されている。これは、アナログ放送の停波で空いた周波数帯域を使って「蓄積型放送」サービスを提供する、という試みだ。端末がコンテンツを自動受信し、コンピューターの動画と同じく、好きなときに番組が視聴できるようになるという。テレビも双方向化に向かっており、テレビとパソコンを区別する意味がいよいよなくなるだろう。

ブロードバンド時代になると、ネットワークにつながる機器が「シンクライアント」(端末のシンプル化)に向かっていくのは「宿命」である。
なぜなら、ネットワークにつながるのが前提となれば、機器側の性能を上げる必要がなくなるからである。
複雑な計算や面倒な処理などはブロードバンドの「向こう側」にあるサーバーで行えば、コンピューターで行っていた大抵のことはできてしまう。あとは、その結果だけを「映像」として端末側に送れば済むようになるのである。
iPhoneのように少々のメモリを搭載して、ネットワークにつながっていなくてもある程度のことができるかたちが一般的になる。
データの大半はネットワークの向こう側に置いておき、デバイスの違いを問わず、どの場所からでもアクセスできるというスタイルが生まれる。それが「クラウド・コンピューティング」である。

クラウド・コンピューティングに対する最大の抵抗勢力は米マイクロソフト社と米インテル社であった。
インテル社はより速いパソコンが求められるからこそ、より高速な半導体を販売できる。
マイクロソフト社も同様で、パソコンが高性能になるからこそ新しいOSやアプリケーションが必要になる。
ヘビークライアント化、つまり端末側の性能をどんどん上げていかないとビジネスが成り立たなくなってしまう。
 だが、半事体の微細化に技術的な限界が見え始め、低価格なネットブックがユーザーの支持を集め始めたことなどから、方針転換を余儀なくされている。
インテル社は分散処理とサーバー分野の強化に活路を見出し、マイクロソフト社はWindowsの開発環境をそのままネットワークの向こう側に移行させる「Windows Azure」というコンセプトを打ち出し、ヘビークライアント路線からの方針転換を始めた。
また、Windows OSの最新バージョンである「Windows7」では動作の軽快さを強化し、次のバージョンの「Microsoft Office」はWeb上で無料で利用可能にする方針を打ち出している。
「クラウド」に対する抵抗勢力は事実上いなくなり、シンクライアント化への流れは確定的になったと言える。

「コンバージェンス」が起こるのは、ハードウエアだけではない。
ネットワークにはIP通信でも有線/無線があり、一方では携帯電話網がある。さらに、デジタル放送網も双方向性を持っており、インタラクティブな番組などで通信が可能になっている。
ブロードバンド時代にネットワークに期待されるのはデータをやりとりする「パイプ」の役割であって、似たような機能になっていくのは当然のことである。

メーカーと消費者が直接つながる

ブロードバンドの普及による一番の大きな変化は、メーカーと顧客が直接つながるようになることである。
コミュニケーション・パスを得るメリットは、同じ商品のリピート注文はもちろん、同じ顧客に対して別な商品を販売したり、その商品に関する様々な情報を提供することで商品の理解を深め、ブランドカを高めたりすることにも役立つ。
ここで言う「顧客」とは、「お金を支払ってくれる人や企業」である。お金のやりとりというのは、それなりの信頼関係があってできることであり、単に大量のメールアドレスを集めてもあまり意味がない。
 課金決済できる口座を持つ信頼関係ができてこそ「顧客」なのである。
これまでメーカーは「手離れ」の良さを念頭に置いた商品開発を行ってきたが、今後は売りっ放しではダメで、逆に「手をかける」ことの方が重要になる。
顧客とどれだけ深い信頼関係ができているかが、ビジネスがどれだけ将来持続するかのバロメーターとして評価されるようになる。

違いは「場所」だけに

ブロードバンド市場は、プライベート(私的)とパブリック(公的)、インドア(屋内)とアウトドア(屋外)という軸で考えると、下図のような四つの「プレイス」に大別することができる。
プレイスというのは、人間が移動する空間軸の考え方でもある。人間は必ずどこかにいる。そして、それぞれの「プレイス」にはテレビ、パソコン、携帯電話、カーナビという中心的なデバイス(機器)がある。
 それぞれの空間で主役となるデバイスは「モジュール」として小型化され、市場拡大のためにお互いの空間へと進出している。それは例えば、テレビがワンセグチューナーとなって携帯電詰機に組み込まれたり、パソコンの一部がモジュー ル化されてカーナビ用のブラウザーとして搭載されたり、ということである。このようなかたちで、デバイスとしての独自性はどんどん失われている。
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ブロードバンド利用の大半は、現時点ではパソコンに留まる。携帯電話の通信速度は年々速くなっており、定額制も増えてきているが、まだ常時接続が一般的にはなっていない。
携帯電話は今後、第4世代(4G)への移行が計画されており、ブロードバンドに移行するのは確実である。
さらに、2009年2月からはWiMAXのサービスも始まっている。自動車がブロードバンドにつながるのは時間の問題である。テレビも地上デジタルへの移行と共に、ネットワーク対応のものが増えている。

いろいろなデバイスがブロードバンドにつながることで、(意識するかはともかく)子供から高齢者まで、あらゆるタイプの人々がブロードバンドを使うようになってゆく。
コンテンツやサービスを提供する側にとっては、どれだけ多くの人に、そしてどの「プレイス」にいても提供できるかどうかが重要となる。
ブロードバンド市場の成長は、実はこれからが正念場なのである。

ワープロや計算機の延長だったパソコンがブロードバンドにつながったことで、人々のワークスタイルが一変した。
携帯電話はまだブロードバンドではないものの、ネットワークにつながったことによって、人々のライフスタイルそのものが一変した。
テレビもネットワークにつながるようになると、リビングルームでの過ごし方が変わってくる。
自動車は今はまだネットワークにはつながっていないが(スタンドアロンの状態)、このあと一気にブロードバンドに接続されるようになってゆくと予想される。
ほとんどネットワークがない状態からいきなりブロードバンドに変わっていくため、携帯電話やパソコンで経験したインパクトより、もっと激しい変化が起こると思われる。

ブロードバンドが普及することによって、ネットワークは「生活に欠かせないもの」になっていくだろう。
そうすると、「どこにいても同じことがしたい」というニーズが強くなっていくと予想される。そのニーズに応えるものが「クラウド・コンピューティング」である。
アクセスするハードウエアの違いを超えて、ネットワークの「向こう側」にあるコンテンツやサービスを利用するという概念で生まれているのは、いろんな「プレイス」から、様々なデバイスがブロードバンドにつながるようになるからである。

アップル/iTunes Storeを中核に、あらゆる「プレイス」ヘサービスを提供

ブロードバンドの普及を前提に、新しいビジネスモデルを作りつつあるのがアップルである。
同社のビジネス全体を考えると、例えばリビングルームにいるときにはiPadを使って、又はAppleTVを通じてテレビからiTunes Storeにつなぐことも可能であるし、iPhoneなら外にいてもつなげられるし、カーナビに接続することもできる。
つまり、ユーザーはどこにいようともiTunes Storeにアクセスできるのだが、これが重要なのである。
コンテンツやサービスの提供者から見れば、5000万人以上といわれるiTunes Storeの利用者にアクセス&リーチできるのは魅力的となる。しかも、どの場所からでも自らのサービスにアクセスさせることができるのである。
 アップル社にとって、デバイスは顧客を獲得するための「手段」であり、そのためには魅力的なデザイン性と、長く使ってもらえるクオリティーが必要なのである。
デバイスの販売で利益を出せるに越したことはないが、それが第一目的ではなく、膨大なユーザーをネットワーク上に集めて、コンテンツやサービスの提供者とつないで、独占的なマーケットプレイスを作ることこそがアップル社のビジネス戦略なのである。
ソフトは直接原価がほとんど掛からないため、母数が増えれば莫大な利益を生むことになる。
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続々登場する「マーケットプレイス」

プラットフォーム・ビジネスで独占的な「マーケットプレイス」をつくろうとしてるのは、今やアップルだけではない。
米グーグル社は「Android」というOSを無償で提供している。Androidは主に携帯電話用のOSとして注目を集めてはいるが、カーナビやテレビなど様々な機器に組み込むことが可能になっている。
Androidには、アップル社のiTunes Storeに相当する「Android Market」というサービスが用意されている。Androidを使うということは、必然的にAndroid Marketにつながるということにもなり、グーグル社の戦略は、OSを無償で提供する代わりにユーザーを獲得(紐付け)するというものである。
 マイクロソフト社も、2009年10月にWindows Phone向けのアプリケーションストア「Windows Marketplace for mobile」を開設し、2009年内に日本でもサービスを開始している。

同じような動きがゲーム業界でも見られる。任天堂はWiiの新チャンネル「Wiiの間」を開設し、その中の「みんなのシアターWii」で映像の有料配信をスタートさせた。
マイクロソフト社は、Ⅹbox360で動画配信サービス「ビデオ マーケットプレイス」をスタートし、2009年に日本でもサービスが開始されている。ソニーは「PlayStation Home」で3D仮想空間を開設し、一部のコンテンツを有料で提供している。これらはゲーム機のユーザーのみを対象にしたものであるが、ブロードバンドハードウエアを活用して独占的なマーケットプレイスをつくろう、という考え方は変わらない。

このように様々なかたちでブロードバンドを前提とするマーケットプレイスが今後次々と出てくることが予想される。

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