人口爆発
人口爆発
2010年の世界の人口は約69億人である。人口が50億人を超えたのは1987年で、そう昔の話ではない。もっと遡ると1950年(現在59歳の方が生まれた頃)の世界人口はわずか25億人であった。1950年に25億しかなかった人口が、今やその3倍弱にまで増加したということである。
国連では、2010年から2030年の間に世界人口は69億人から83億人とおよそ2割、人数にすると14億人以上増えると予測している。
- 14億人というのは、現在の中国の人口にほぼ匹敵する数字である。この20年で中国がもう一つ増えると想像すると、いかに人口が爆発的に増えるかがイメージできる。
中国とインドの2カ国だけで世界人口の4割近くを占める。2010年から2030年にかけての人口増加は、インドは2.9億人であるが、中国はその約1/3の1億人程度と予測されている。
インドは2030年までに中国を抜いて世界ナンバーワンになる可能性が高い。
労働市場としても消費市場としても、今後インドの存在感が飛躍的に大きくなる可能性が非常に高いと考えられる。
ブラジル、ベトナム、インドネシア、トルコ、アルゼンチンといった新興国は、2010年から2030年にかけて2ケタのパーセンテージで人口増加が見込まれる。
米国は先進国の中で例外的に16.4%と、高い伸びが予想される。
対照的に、幾つかの先進国、特に日本、ドイツ、イタリアでは「目に見えて」人口が少なくなる。
特に日本は人口減少の幅が著しく、2010年から2030年の間に総人口の1割近くを失うと予測されている。
しかし、ゲノム医療や再生医療といった、従来とは一線を画する医療技術の実用化が進めば平均寿命が延びる可能性もある。
いずれにしても、日本が世界に先駆けて「超高齢化」と「人口減少」に突入することは間違いない。
日本がどのように対処するのか、世界の注目が集まっている。
人口増加+経済成長による消費の爆発的増加
これからの10年、15年における最も大きな変化は、「地球の限界」を意識せざるを得なくなるということである。
このことをテーマに、ビジネスのあり方や価値観、消費行動など様々なものが、今までとは異なる方向へ転換を余儀なくされる。
世界人口は爆発的な勢いで増え続けている。
人口が増加すれば、より多くの食料や資源、エネルギーが必要になる。加えて、「経済成長」によって人口増加を上回るペースでこれらの需要は拡大すると見込まれる。
近年は中国が急速に経済成長したことで、世界経済のあらゆる分野で影響力を発揮している。石油では既に米国に次ぐ世界第2位の輸入国であり、大豆の輸入量だけでも日本が輸入する全ての農作物の量を上回る。
中国ではこれから20年近くは成長が続くものと予想され、需要はまだまだ伸び続けるであろう。
さらに、これからインドが高度経済成長期に入ると見込まれている。
収入が増えれば、美味しいものを食べたり、テレビや携帯電話機、自動車を持ちたいと考えるのは当然の成り行きだが、例えば肉を食べたいと思えば、牛や豚を飼育するためにその体重の何倍もの穀物が必要になる。
食生活の西洋化(=肉食化)が進めば、穀物需要が人ロ増加に比例して飛躍的に増えると予測される。
しかし、自然が循環する水の量は一定であり、環境破壊などがネックになって耕地面積はこの数十年ほとんど増えていない。
インドの経済成長がきっかけとなり、世界全体が「全ての人が求めるだけの量を提供できない」という新しい現実に直面することが予想される。
国連や世界銀行などが予測している2050年の人口は、およそ90億人前後となっている。
人類の誕生は約300万年前といわれている。300万年の時間を費やしてようやく25億人まで増えてきたのに対し、直近のたった50年間でさらに3倍近くになるということは「爆発的」としか言いようがない。
つまりこれから10年、15年という長期レンジで戦略を考えるとき、「世界人口は爆発的に増加している」ということを前提に置いて考えるべきなのである。
人口の推移と予測を先進国と発展途上国に分けたものが下図である。
ここから見えるのは、人口が増え続けているのは発展途上国であり、世界の1/6を占める現在の先進国の人口はほとんど横ばいということである。
発展途上国には中国とインドが含まれており、この2カ国だけで発展途上国のおよそ半分を占めている。
2030年ころには中国の人口の伸びは頭打ちになる見込みだが、インドは2050年ころまで人口は伸び続けると予測されている。そのほかでは、インドネシアやプラジルなども今後大幅に人口が増えると予想される国である。
増加のスピードが急に速まったのは、18世紀後半の産業革命以降である。工業で生産を拡大するには、多くの人手と原材料が必要になる。そのため、海外に植民地を求めて「大航海時代」が始まった。その結果、発展途上国の多くが「植民地」として原料と資源を供給する一方、先進国でそれらを消費する、という国際分業の構造が生まれた。
20世紀に入ると、先進国では人口増加のペースが落ち着いてきたが、発展途上国では労働集約型のまま農業生産を拡大させたため、人口が急激に増え始めた。
農作物を生産するには労働力を増やす必要があり、そのために人口が増え、さらに食料が必要になって人口が増える、という構図が生まれたのである。
特にコーヒー、紅茶、ゴムなど換金目的の作物を半ば強制的に栽培させられたことが、人口増加に拍車をかけたといわれている。
人口が増加する要素は、他にもいろいろある。
例えば、イスラム諸国は全般的に出生率が高い。これは、中東諸国は政治的に不安定な情勢が続いており、「子は一人でも多い方が有利」という意識が強く働いているからである。
戦時中の日本も似たような状況であったが、宗教も大きな影響を与えており、例えばカトリック系では堕胎が認められていないため出生率が高い傾向にあるということも関係していると思われる。