国民生活を脅かす3つの懸念
国民生活を脅かす三つの懸案
政府の最も重要な役割は「国民生活を守る」ことでり、それは将来的にも変わらない。
今後国民生活を脅すような幾つかの大きな懸案が持ち上がってくることが予測される。
第1は、エネルギーや資源を将来にわたってどのように安定確保するか。
第2は、社会福祉で足りない財源をどうするか。
そして第3は、持続的な成長ために雇用の安定確保をどうするかである。
日本は量的拡大を追求するコストダウン重視のモノ作りから、新興国では真似できない新しい分野、すなわち「21世紀型産業」へとシフトしなければならない。
それは、数は少なくとも高品質なモノや、様々な分野の技術を複合的に組み合わせたモノ、モノとサービスの組み合わせなどである。
新産業への転換が実際どこまで進むかは未知数であるが、日本にはこれら高付加価値なビジネスを作るための技術も資金も、そして人材もノウハウもある。
斜陽化する20世紀型産業の減少分をカバーできるだけの新産業を創出できる力は十分にある。
もう一つの期待は「投資」による金融所得である。
日本は対外純資産が225.5兆円(2008年末)と世界最大であり、個人の金融資産だけでも約1500兆円と推計されている。
高齢化で働けない人が増えるなら「お金に働いてもらう」という考え方が出てくるのは必然だろう。
日本は「拡大と成長」から「安定と持続」重視へと、社会構造を転換する時期に差し掛かっている。
人口増加から人口減少へと転じたことによって、これからは一人ひとりの豊かさを追い求める時代から、社会全体の豊かさを考える時代へと変わっていくであろう。
それに伴って、政府も新しい時代に対応すべく、方針転換が迫られている。
人口拡大・デフレが前提の時代であれば、インフラ整備のために赤字国債を発行しても経済成長による税収増でカバーできた上、地方も含めて公共投資を積極的に行うことができた。
しかし21世紀は、人口減少・デフレへと社会の前提が変わる。20世紀の基幹産業が斜陽化する影響も併せて、このままだと税収が先細っていくことは避けられない。
新たな財源を確保し、かつ安定した財政構造へ転換することが急務となっている。
新産業を育成して歳入の増加を図ると共に、公共事業の縮小や社会保障の見直し、電子化によるコスト削減などで歳出を抑えるのが基本路線になるだろう。
年金や医療保険については、このままいくと破錠は避けられない。
税制もセットで、制度設計から抜本的な見直しが迫られる。
「電子政府」の一環として「ナショナルID(社会保章番号)」を導入することで所得の捕捉率を向上させ、不公平感の解消と共に税収増を狙うことも税制改革の1つの有効手段として起こりえる。
高齢化に伴って社会保障費用が重くなっていくため、国民レベルでも負担増は避けられない。だが、負担増にも限界がある。
基本的には医療や社会福祉など最低限を政府が保証し、それ以上は個人の裁量に委ねるというスタンスへと政策は変わっていかざるを得ないのではないだろうか。
「世界第2位の経済大国」であることが、これまで日本にとって大きな誇りであった。
だが、経済規模で言えば10倍の人口を抱える中国にその地位を昨年遂に明け渡した。
その後ろにもインドやプラジルなど、巨大な人口を抱えながら経済成長を続ける国々が控えている。
人口減少に向かう中、日本がこれらの国々と規模を競うことはナンセンスになってきている。
日本は経済一辺倒の価値観を見直し、新しい国の姿を考えるべき時期に差し掛かっているのである。
21世紀ビジネスにとって最も重要な資産は「お客様」であり、最も重要な経営資源は「人材」なのである。