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安全・安心ビジネス

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安心・安全ビジネス

守られているという「安心感」が価値を生む

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安心・安全産業は、「物理的な安全確保」のみならず、守られていることによる「安心感」を提供するサービス産業である。戦後の日本で「水と平和はタダ」といわれていたのは、今や遠い過去の話になりつつある。テロヤ犯罪、災害や事故、疫病ヤ健康被害といった様々な社会不安が増大することで、新しいビジネスが生まれるであろう。

人々の安全の基盤が脅かされる要素は、国レベルでの「防衛」から家庭での「防犯・防災」まで多岐にわたる。資産、交通、エネルギー、食生活、環境、健康、住生活都市全体、ネットワークセキュリティー、企業リスクマネジメントといった、安心・安全産業は幅広い分野に広がっていく。このような産筆に頼らなければ安心が確保できない社会は、決して望ましい姿ではない。だが、ニーズがあれば、ビジネスとしてそれに応えようとする企業も増える。
 「安全」とは、「危害や損害を受ける可能性がないこと」であり、、「安心」は文字通り「心が安らかになる」という心理的なものだ。安心・安全産業における重要なボイントは、「目に見える形」でサービスを提供することである。
例えば、セコムはネットワークですべて管理できるにもかかわらず、わざわざ現地へ赴くパトロールも実施している。実質的な安全確保もさることながら、「守られている」という安心感が大切なのである。「何かあったら頼れる」という安心感には、「人」によるサービスが不可欠だ。
米国の高級住宅街では、町全体を高い塀で囲み、24時間体制で周辺を警備する「要塞タウン」と呼ばれるところも出てきている。日本でも、厳重なセキュリティーをセールスポイントにした高級マンションや住宅地が出て来てており、安心・安全が付加価値になりつつある。
都市機能全体の安全・安心を確保することは、地域としての価値を高めることに直結する重要なテーマだ。少子高齢化および人口減少対策として国が政策的に移動人口を呼び込もうとするなちば、女性や高齢者の単身世帯が増加している現実に目を向け、「安心できる安全な住環境」の整備を推進する必要がある。

安心・安全に関連して今後の成長が予想されるのは、ネットワークカメラである。これまでも防犯カメラはあったが、ブロードバンドの普及で遠隔地から鮮明な画像で監視ができるようになるため,利用価値が拡大するに違いない。実際に1万円台のものから30万円以上のハイエンド機種まで、市場に投入される製品数は急速に増えている。顔認識技術を応用した特定人物の検出など、ソフトウエアの部分でも様々な新技術が出てきている。
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子供を対象とする安心・安全のニーズが高まる

幼い子供を狙った悪質な事件が後を絶たない。1980年代後半に発生した「連続幼女誘拐殺人事件」や1997年の「神戸連続児童殺傷事件」、2001年の「付属池田小事件J、2004年の「奈良小1女児殺害事件」といった凶悪かつ陰惨な事件は、国民に大きな衝撃を与えた。
法務省発行の「平成20年版犯罪白書」によると、主要な刑法犯のうち「13歳未満の子供」が被害者となった数は、2003年に過去最悪の4555人(1998年比1.8倍)を記録した。

園や学校での安心・安全対策やPTAを中心としたパトロールの強化、警察や自治体による不審者情報の公開などが功を奏し、2004年以降の全国の被害者数は減少傾向にある。
だが、2007年には82人もの子供が犯罪にまきこまれ、命を落としている。
また、傷害の被害者数は1998年比で2.6倍、暴行は同年比で5.2倍と大幅に増えているという現実もある。

核家族化が進行すると共に集合住宅ヤ女性の社会進出による留守家庭が増え、放課後や休日の子供の行動に対して「大人の目」が直接届きにくくなっている。
離れていても子供の安全を確保できるよう、子供向けの「見守りサービス」は、様々な種類が登場し始めてきている。
例えば、GPS測位機能を搭載した子供向け携帯電話機や、子供が携帯電話機を操作して保護者に位置情報を知らせるサービスなどである。
また、ICタグとケーブルテレビ局のインフラを融合させたものや、PASMOなどのICカード乗車券を利用し、塾などに設置された機械や自動改札を通過すると保護者にメールが配信されるサービスなともある。

外国人増加に伴う社会不安

日本に居住する外国人や、観光などで日本を訪れる外国人は増加の一途をたどっている。
言葉や文化、生活習慣の異なる外国人は価値観も多様であり、日本的な常軌や限度が通用しない場合も多い。
「平成20年版犯罪白書」によると、外国人による一般刑法犯(交通関係業務過失を除く犯罪)の検挙件数は2005年に過去最多を記録したが、翌2006年以降は減少に転じている。
自治体を中心に外国人との共生が強く訴えられてきているが、潜在的に不安を感じている日本人は少なくないだろう。
今後、労働力人口の減少は避けられないため、外国人労働者は欠かせない存在になる。
だが景気が悪化した時、外国人に対して「日本人の仕事を奪っている」という意識が芽生え始め、民族的対立が生じるおそれもある。

様々な分野に広がるトレーサビリティー

近年、産地の偽装や毒物の混入、工業用に転用するはずの事故米が食品として流通するなど様々な事件が次々と起き、食に関する不安が広まっている。
安全性という面では遺伝子観み換え作物に対する拒絶反応は、特に日本では強い。
 食の分野で注目されるのは、食品の出所や履歴を追跡する「トレーサビリティー」である。
技術的には、日立製作所が実用化した無線ICチップ「μ-Chip(ミューチップ)」が本命だといわれている。
μ-Chipは縦横400μm、厚さ60μmという超小型の金属片で、そこに128ビットの番号データを格納できる。 わずか128ビットといっても、それで表現できるのは2の128乗=約43億のさらに4乗という途方もないケタ数である。
非接触で情報を読み取れるため、幅広い活用が期待されている。

牛のBSE問題や鳥インフルエンザ、中国産野菜の残留農薬の問題などの事件が続き、消費者は単純に価格だけで食品を選ばなくなってきている。
流通最大手のイオングループは、「消費者の安心・安全」を大方針として、メーカーに徹底的なトレーサビリティーを求めている。大手流通が動き出したことで、トレーサビリティーは今後、生産者、流通などすぺてを巻き込んだ業界横断的なシステムへと発展する可能性が高い。

トレーサビリティーは、食品以外でも様々な分野での活用が期待される。
μ-Chipをブランド品に埋め込み、ホンモノであることを証明するという利用方法も検討されている。
近年の東アジアでは偽ブランド品による被害が深刻化しているが、μ-Chipの導入が「撲滅の決め手」になるかもしれない。

ペットや偽造品対策も対象に

無線ICチップをペット分野に導入しようという動きもある。動物愛護管理法では既に、動物の所有情報を明らかにするために無線ICチップの装着が推進され、危険動物や特定の外来生物には無線ICチップの埋め込みが義務付けられている。
今後は所有情報だけではなく、「血統の安心・安全」を保証するものとして、予防接種と同じような感覚で無線ICチップの活用が進む可能性が高い
 無線ICチップは「情報(IT)」と「モノ」が融合した例であるが、既存産業が垣根を越えて連携したり融合したりすることで、新しいビジネスモデルが次々と生まれてくる。
ブロードバンドの普及に加え、これからはデジタル家電などあらゆる機器がネットワークにつながるようになる。
これまでは「IT=コンピューター」であったが、今後の広がりは過去の比ではない。
だが様々なものがつながって便利になればなるほど、セキュリティーに対する不安がこれまで以上に高まる。
ソフトウエアの分野では、ITセキュリティーネットワークの安心・安全がこれからますます重要になるだろう。

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