我々を取巻く環境変化
我々を取り巻く環境の変化
社会変化の要因
社会変化の要因は、大きくは
- 人口動態の変化など時間の経過と共に起こる必然的な環境変化
- 技術革新によって生じる前提条件の変化
- 1)と2)の2次的な結果としてもたらされるビジネスや生活スタイルなどの変化
という3点に分けられる。
必然的な変化で中心になるのは「人口」であり、人口の絶対数を左右する最も重要なものは年齢構成である。
現在30歳の人は(生きていれば)10年後には間違いなく40歳になっている。
時間の経過と共に100%起こる変化である。
よほど大きな政策転換がない限り、人口のトレンドを変えることは難しく、高齢者が増え子供が減る、若者が減って労働人口が減るといったことは、ほとんど人間の力が及ばない、社会の大きな潮流と言える。
特に今後注目されるのは、中国に続いてインドが高度経済成長を迎えるということである。
世界人口の4割を占めるこの2カ国で人口増加と経済成長が続くと、膨大な食料・資源・エネルギーが必要になる。インドの経済成長を契機に、世界中で「モノが足りない」という問題が顕在化する可能性が高い。
2)の技術革新も、新しい社会を形作る重要な要素である。
これから10年、15年先を考える上で最も注目すべきはやはり「ブロードバンド」だろう。
ブロードバンドは今も広く使われているが、現時点でブロードバンドにつながっているのはパソコンだけである。
携帯電話はネットワークにはつながっているものの、ナローバンドが中心であり、常時接続にもなっていない。
テレビやカーナビなどが本格的につながるのもこれからである。
ブロードバンドの中でも「WiMAX」や「第4代世代携帯電話(4G)」と呼ばれる新しい技術によって、自動車や携帯電話機、外出中のパソコンなどを使い、あらゆる所でブロードバンドが使えるようになる。
それは、社会においてインフラになるということであり、例えばビジネスならその存在を前提に見直さざるを得なくなるということである。
これまでも時代の変化と共に様々な分野で新しい技術が出てきた。それは今後も続くだろう。
例えば2次電池では、これまで充電に何時間もかかるというのが前提だったが、技術革新で5~10分で済むようになるであろう。
90歳にも満たないことが前提だった人間の寿命は、再生医療やゲノム(遺伝子)医療によって100歳を軽く超えるようになる可能性もある。
技術革新とはビジネスや社会の「前提条件」が変わることでもあり、それはこれからも間違いなく続くだろう。
3)として言えるのは、新しいニーズや環境、前提条件に合わせて、例えばビジネスは変わらざるを得ないということである。
従来の枠組みでは対応し切れない場合、大きな業界再編が起こったり、業界ごと消滅したりするケースも出てくるだろう。
一方、消費についても、モノがなかった時代(成長期)と現在のように必要なモノがひと通り揃っている時代(成熟期)とでは、嗜好が違うのは当然である。 先進国と新興国でも、それぞれの国民の意識も求めるものも大きく異なる。
「見直し」ではなく「再構築」
これから先の10年は、過去の10年とは比べものにならないほど、社会や生活が大きく変わるだろう。
我々は今、そういう歴史的な変化点にいるという自覚を全員が持ち、正面から変化に向き合うべきでなのである。
21世紀社会に対処するためには、組織とビジネスを一旦白紙に戻して、今ある経営資源で何ができるかを考える必要がある。
つまり破壊的な「再構築」を行う覚悟が必要なのである。
それは、過去のしがらみや組織の利害にこだわって、「見直し」などとお茶を濁して済まそうとしていると、どんな巨大企業といえども遠からず時代の波に呑み込まれてしまうであろう。
企業文化や価値観にまで踏み込んで、ゼロからの再設計が必要なのである。
躊躇していたるほど、変化の大波は待った無しでやってきているのである。
今大切なのは、一度立ち止まって「常識」を見直し、そして外に広く目を向けてみることである。
今のビジネスが10年後もこのまま続けられるのか。
今までの考え方がこれからも通用するのか。
「業界」という概念にどれほどの意味があるのか。
これまでの常識を一度徹底的に疑ってみるべきであろう。
それはこれまでの社会での「常識」であり、環境が180度近く変われば同じように通用するとは限らない。
今までの尺度でいけば、むしろ世の中の方が「非常識」に変わるのである。
そして、できるだけ多くの時間を使ってお客様と向き合い、これから何を求めようとしているのか、耳を傾けるべきなのである。
そこからチャンスやリスクの予兆がきっと見つけられるはずである。
世界に目を向けても、新興国の人口増加や経済成長、その一方で米国の凋落など、国際情勢は今までと大きく変わり始めている。
これらの変化に伴って、「市場環境」や「競争ルール」、「価値観」、「技術の前提条件」など、根本的な部分から我々を取り巻くビジネス環境も大きく変わっていくだろう。
市場環境は米国一極集中、自由・開放が基本路線であった。
だが、米国の経済的・軍事的な凋落によって、世界は「多極化」へと進んでいくであろうと予想される。
さらに、エネルギーや資源の逼迫に伴って、これらを囲い込む意味でも「ブロック化」が進んでいくと思われる。
エネルギーや資源問題は、「成長力重視」から「持続力重視」へと、ビジネスの評価基準を変えるきっかけにもなる。
モノの量的拡大による成長が難しくなる上に収益の安定性が強く求められるようになる。そんな中で多くの企業が「ブロードバンド」による「サービス」に活路を見出すケースが増えるであろうということも予想される。
「人口は自然に増える」「物価は毎年上がっていく」「首都は東京である」など、普段はあまり口に出さなくとも「暗黙の了解」というものがある。
しかし、今まで前提だと思っていた事柄が徐々に変わり始めてきている。
日本の人口が減少を始めているのは周知の通りである。
物価は一時的どころかこの10年間近く下がり続けており、今や物価が下がるのは日本では「常識」と言ってもいい。
ここで重要なのは、今までと違う新しい社会が形成されつつあるということであり、それは「過去の延長線上にない」ということである。
これまでは各々の利益だけを追求すればよかった。
だが、これからは「社会全体の利益に反しない」ことが重要になると予想される。
「環境」がまさにその代表例である。
たとえその企業が大きな利益を出していたとしても、それが社会全体のサステイナビリティを損なうようなビジネスなら、やがて存在が許されなくなる。
逆にビジネスとして儲かる見込みが乏しくても、それが安全保障など社会全体の利益につながるものであれば、税金を投入してでも積極的に支援する、という姿勢が明確になっていくと見込まれる。
食料やエネルギー、軍事など、個別企業の損得だけでは計れない状況が多くなり、「企業+政策」で世界と戦わざるを得ない場面が増えていくことも大いに予想される。