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総合産業として高い付加価値を生む「ロボット産業」

ロボット産業は、様々な先端技術ヤノウハウを一つにまとめた「総合産業」である。これから人手不足の深刻化と共に、ロボットのニーズは確実に高まってくる。中でも「危険」「汚い」「きつい」が揃った「3K」と呼ばれるような現場では、ロボットを活用しようという動きが本格化する。特に若年労働者はますます貴重になる。過酷な作業に対する「支援」や「代替」の方法としても、ロボットの活用は有効である。

ロボットの導入は、建設や警備、農業、医療、介護、福祉、軍事、宇宙開発などの分野が、他分野よりも先んじて実現すると考えられる。
例えば、これからエネルギー不足の対応と環境対策のために世界各国で原子力発電を見直す機運が高まってくるが、これに伴って発電所内の点検やメンテナンスで使われるロボットの需要は大きくなる。 ほかにも、災害時の人命救助や復旧作業といった危険な場面や、厳しい職務内容にもかかわらず十分な報酬が得られにくい介護の現場など、人材が不足しがちな分野でのロボットの活躍が期待される。

「ロボトロニクス」とは、機械と電子部品に、自動制御(コンピューターとソフトウエア)を組み込んだものである。
「ロボトロニクス産業」は、「ロボットそのものを作るビジネス」というよりも、「ロボットを作る要素技術で、様々なものを作るビジネス」である。
具体的には、対話型で操縦可能な飛行機、ロボットアームを装備した多目的に使える建設機械、歩行困難な人をサポートするロボット装具などである。
モーターへの移行とコンピューター化が進むにつれ、自動車もロボトロニクス産業の一部になっていく。
これまでは市場が大きくなかったことから、コスト削減のために他分野からの部品を流用するケースが多かったが、市場が立ち上がってくると専用パーツが設計されるようになり、さらに性能が上がって新たな需要を生む、という好循環ができる。
 ロボトロニクスは、高品質な素材、精度の高い加工技術、半導体やセンサー、ソフトウエア開発力、通信など、幅広い分野の高度な技術を組み合わせることで初めて実現できるものだ。
これらの技術をすべて持ち、自力で取り組める国は、先進国細の中でもごく限られている。日本には様々な分野の先端技術があり、その強みを生かすためにもロボトロニクスは産業として重要である。
世界各国で分業化が進む中で、ロボトロニクス産業が日本の重要な基幹産業の一つになるのは間違いない。

他の先進国メーカーもロボトロニクス化を急速に進めていくだろう。
「圧倒的な安さ」で攻勢をかける新興国メーカーと差別化を図るという点でも重要だからである。
日本、米国、EUはそれぞれ「負けられない戦い」とLて国を挙げて取り組むことになる。
ロボトロニクスヘの展開を視野に入れて、例えばGMとGEの合併など「業界を超える超大型再編」が起こる可能性もある。
 これまでのロボットは、産業用ロボットが主体であった。だが、産業用ロボットで培われた技術やノウハウは民生用ロボットヘと転用され、新しい市場を形成しつつある。核となる要素技術が普及価格帯で揃い始めたことも、大きな推進力となっている。掃除ロボットや防犯ロボットなど実用的なロボットの商品化も始まり、様々なものが出揃いつつある。
民生用ロボットが次々に登場している背景には、この数年で要素技術が急速に進歩したことがある。
例えば、カーナビゲーションの普及によって、低コストで高性能なジャイロセンサー(方位)、位置・角度センサー、加速度センサーの開発が進んだ。また、携帯電話機の進歩によって小型の大容量バッテリーが登場し、ポータブルAV機器の進歩によって高精度な制御モーターやCCDカメラなどが生まれた。
そこに日本が以前から持っているモノ作りのノウハウや、組み込みソフトウエアの開発力を組み合わせることで、ロボットを実現させているのである。 このうちどれかが欠けてもロボット産棄は成り立たないため、付加価値が非常に高い。
ハイテク技術の塊と言えるロボットは、安易に輸出したりノウハウを放出させたりしてはならない性質のものだ。

この数年の間には、かつてよりも格段に安い価格で「二足歩行ロボット」や「ペットロボット」などが発売されている。
日本では「鉄腕アトム」や「ドラえもん」、「機動戦士ガンダム」などのロボットアニメが盛んであり、ホビー用市場の下地はできている。 低コストの「ホビー用ロボット」や、実際に乗って操縦できる「屋外型娯楽用ロボット」などは、市場として大いに期待できる。
行政側も、ロボット産業を重要分野として位置付けている。
経済産業省は、「21世紀ロボットチャレンジプログラム」などの施策を通じて、2020年までにロボット産業を自動車産業並みの基幹産業に成長させることを目指している。
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現実的なのはパワードスーツ

オペレーション作業を運行するロボットには、古くからあるパターン認識程度の人工知能を搭載すればよい。
だがロボットに人間のような自律的な判断をさせるのは将来的にもまずあり緯ない。これは技術的な問題ではない。
不確かな状況では、人間であっても判断を間違えることがある。間違いかどうかは、見方によって判断が分かれることもある。 そして何よりもロボットは「責任」を取ることはできない。結果に対する責任は人間が負うしかなく、ロボットができるのは、あくまでも「支援」までである。
センサーや制御用モーター、電池といった主要部品の性能が軒並み改善し、しかもコストダウンしたことで、パワードスーツが有望なビジネスとして脚光を浴びている。「ロボット」と「パワードスーツ」の違いは、指示・命令を機械と人間のどちらが担うかという点である。
身体の様々な部分を機械や電子部品でアシストし、肉体をはるかに超える性能を発揮させた「パワードスーツ」は様々な分野で将来普及するものと考えられる。
自動車は、少し見方を変えると、足の機能を拡張するパワードスーツでもある。パワードスーツは移動だけではなく様々な用途に使えるようになる。建設現場で力仕事をしたり、歩けない人の歩行を支援したりするといった使い方も可能になる。
 パワードスーツの代表的なものとしては筑波大学教授の山海嘉之氏の研究室が開発した「HAL」がある。世界に先駆けてパワードスーツを実用化したことで、世界中から注目を集めている。
2004年には大学発ベンチャー企業としてサイバーダイン社を設立し、レンタル形式で市販を開始した。同社は住宅メーカーである大和ハウス工業が帯2位の株主として増資を引き受けると共に、2008年4月には茨城県つくば市で量産工場の建設を始めた。本格的なビジネスとして動き始めたことには大きな意義がある。大手メーカーも動き始めた。

これまで「ロボット」と「自動車」は別の分野として研究開発が続けられ、独自の進化を遂げてきたが、センサーやカメラ、アクチュエータといった要素技術はほほ同じである。
例えば日産自動車の「PlVO2」は、「対語をしながら動く」というコンセプトで作られている。スズキの「PIXY」のコンセプトは、2030年を想定した「近未来コミューター」だ。モーター駆動で走行スピードは人が歩く程度であるが、その場で360度ターンも可能である。操縦は、パソコンのマウスのような操作で行う。衝突防止のため、センサーや超広角リアビューカメラも搭載している。
トヨタ自動車の「i-REAL」は、もともとはソニーが数年前から始めていた「一人乗り移動体技術」事業であり、それを知的財藍権を含めて買い取ったものがペースになっている。一人乗りで電化されたこれらの自動車は、まさにパワードスーツである。今後パワードスーツは、ロボット産業の主力ビジネスになっていくだろう。

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